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DC/DCコンバータの位相補償の悩みはWEBENCH Designerで解決!

[最終更新日 : 2017/10/18]


DC/DCコンバータは、フィードバック制御を行うことで電圧を制御していますが、制御にアンプを使用している場合、LCフィルタの定数を変更すると位相特性が変わるため、位相余裕を確保できているかどうか確認する必要があります。

位相余裕が不足している場合、位相補償の定数を変更する必要がありますが、定数を設定するのは非常に複雑な計算が必要となり一筋縄ではいきません。

Texas Instruments(以降、TI)社のWEBENCH Designerには位相補償部品の再設計の機能(Re-Comp)があり、この機能を使用すれば位相補償の部品定数を簡単に変更することができます。

本記事ではTPS54335Aを使用してAutomatically RecalculateとRe-Compの機能を解説します。

実際にWEBENCH Designerを使ってみよう

今回はTPS54335Aを使用して以下の仕様を満たす電源回路を設計するという課題を与えられたものとして進めていきます。まずは電源の仕様について確認しましょう。

使用する電源IC Texas Instruments TPS54335A
Vin 20.4V~27.6V (typ:24.0V)
Vout 1V±5%
Iout 1.5A
特記事項 インダクタンスは10μH、出力コンデンサは200μF以下にする

それでは早速WEBENCH Designerを使ってTPS54335Aの回路を設計します。

まずはTI社のホームページで"TPS54335A"を検索しましょう。検索すると検索結果の右側にTPS54335A用のWEBENCH Designerが表示されます。ここのVinとVout、Ioutに先ほどの仕様を入力し、Open Designボタンをクリックします。

図1:TPS54335A検索結果にパラメータを入力

するとWEBENCH Designerが立ち上がります。画面上にあるSchematicボタンをクリックするとTPS54335Aを使用した回路図が表示されます。

図2:WEBENCH Designerの画面

次に特記事項のインダクタンスと出力コンデンサの値を変更します。

図3:定数を変更した後

Automatically Recalculateの実行

インダクタンス(L1)10μH、出力コンデンサ(Cout)200μFに変更すると、位相余裕が-2.0°になり、エラーメッセージがでてきました。WEBENCH Designerでの安定動作の目安は35°ですから、再設定する必要があります。位相補償を再設定するため、Automatically Recalculate選択し、Recompensateを実行します。 

図4:Auto recalを選択してRecompensateをクリック

Automatically Recalculateを実行後、位相余裕を確認すると50.734度になり、WEBENCHの目標値35度をクリアしました。

図5:Applyを選択してApply Changeをクリック

位相余裕が確保できましたので、Apply Changeをクリックしてデザインに反映します。

負荷変動時の出力電圧を確認しよう

今回出力電圧を1.0Vに設定しています。この電圧はCPU等のデジタル系ICの電圧として使われますが、この場合、±5%の精度を保つ必要があります。

WEBENCH DesignerシミュレーションのLoad Transientを使用して負荷変動時の出力電圧を確認してみましょう。

画面上にあるSimをクリックし、Load Transientを選択し、実行します。

図6:シミュレーションのスタート

その結果、負荷変動時の出力電圧は最大1.084V、最低0.9023で±5%を超えていることがわかりました。

このままでは1V±5%の仕様を満足させることができません。

図7:シミュレーション結果(位相補償前)

Re-Compの実行

そこでRe-Compを実行し、クロスオーバー周波数を変更します。クロスオーバー周波数は、フィードバックループのゲインが0dBになる周波数のことですが、この周波数を上げることでDC/DCコンバータの応答を良くすることができます。

クロスオーバー周波数は現在13.6kHzに設定されています。13.6kHzではオーバーシュートの電圧が規格を満足できていませんので、仮にクロスオーバー周波数を47kHzにしてAuto Compensateで位相補償の再計算を実行してみましょう。

画面上にあるRe-Compをクリックし、Cross Over FrequencyをMin:42kHz、Target:47kHz、Max:52kHzに設定してAuto Compensateをクリックします。

図8:クロスオーバー周波数を変更しAuto Compensateをクリック

計算結果より、Cross Over Frequency 44.47kHz、Phase Margin 48.84度となりましたので、Apply changes to designにてデザインに反映します。

図9:位相補償の再計算結果

Rcompは1.58kΩから4.99kΩに、Ccompは22nF から68nFに、Ccomp2は2.7nF から33pFに変更されています。

図10:位相補償後に変更された定数

もう一度Simを実行し、負荷変動時の出力電圧の精度を確認してみましょう。

図11:シミュレーション結果(位相補償後)

最大1.044V、最低0.9582Vとなっており、無事仕様を満たすことができました。

まとめ

今回はTPS54335Aを題材に、WEBENCH Designerを使った位相補償の方法を説明しました。本来はこれらの作業には手間がかかりますが、WEBENCH Designerを使うことでDC/DCコンバータの位相補償の定数を簡単に変更することができます。WEBENCH Designerには今回紹介した機能以外にも多くの機能が用意されています。これらを活用することで電源設計の工数削減に役立てみてはいかがでしょうか。

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