Texas Instruments 技術情報

高効率で簡単!TI社製ブラシ付きDCモータードライバ DRV8870

[最終更新日 : 2017/08/10]


はじめに

模型やおもちゃなどでも使われるブラシ付きDCモーター。今回はこのブラシ付きDCモーターの速度制御を、高効率で簡単に実現できるモータードライバについての記事です。

チョッパ制御によってブラシ付きDCモーターを制御するTexas Instruments(以降、TI)社製のモータードライバ「DRV8870」を紹介します。本記事では、TI社提供のデータシートや評価ボードの情報を基にした簡単なモータードライバの検討方法もあわせて紹介します。

ブラシ付きDCモーターの速度制御方法

ブラシ付きDCモーターの速度を変える方法は、簡単に言うとモーターにかける電圧(モーター電圧)を変えることです。モーター電圧を小さくするとモーター速度は遅くなり、モーター電圧を大きくするとモーター速度は速くなります。

昔からある速度制御の方法は下記のように可変抵抗にてモーターへ掛かる電圧を変える方法です。しかし、この方法では可変抵抗のところでの電力損失が大きくなり、非常に無駄の多いものになってしまいます。

モーター速度制御回路

そこで、この損失を抑えるため、次に挙げるチョッパ制御方式が考えられました。

チョッパ制御方式での駆動

チョッパ制御方式とは、下図のようにスイッチングすることで、必要なエネルギーだけモーターへ与えることができる方法です。

スイッチングする蛇口(スイッチ)としては、最近ではMOSFETが用いられています。

スイッチがONすれば導通してモーターに電圧がかかります。

モーター スイッチON

逆にスイッチがOFFすればモーターに電圧はかかりません。

モーター スイッチOFF

例えば、蛇口(MOSFET)が50%の割合でONされ、50%の割合でOFFされれば、モーターへ掛かる電圧は、実効値として50%となります。つまり、電源の半分の電圧がかかったことになり、その分、モータースピードは遅くなります。

このような方法を用いることで、無駄な損失を減らしつつ、速度制御が可能になりました。

チョッパ制御方式

モーターの回転方向も制御可能なHブリッジ(フルブリッジ)

前述のいずれの制御方式にしても、電圧が印加される向きが一定であれば、モーターは決まった方向に回転します。

では、モーターを逆回転させるにはどのようにすればよいでしょうか?

答えを言いますと、「逆に電圧をかければ良い」のです。下図が逆方向に電圧をかけるための回路です。これはMOSFETを4つ用いてアルファベットの「H」のように結線した方式で「Hブリッジ(フルブリッジ)」と言われるものです。

「H」の真ん中にあるコイルのようなものは、モーターを意味します。

これにより、チョッパ制御ができて、更に回転方向制御もできるようになりました。

Hブリッジ

例えば、FET1とFET4をONすれば、電流はOUT1-->OUT2に流れます。

Hブリッジ FET1,FET4 ON

一方、FET2とFET3をONすれば、電流はOUT2-->OUT1に流れます。このようにすることでモーターの回転方向を制御することができます。

Hブリッジ FET2,FET3 ON

このあとは、このHブリッジが内蔵され、簡単にモーターを制御できるDRV8870というモータードライバICの紹介です。みなさんもDRV8870を使ってDCブラシ付きモーターをまわしてみませんか?

DRV8870の特徴は?

DRV8870は、HブリッジのMOSFETが内蔵され、簡単にモーターを制御できるICです。

特徴としては、

  • 使い方が簡単
  • コンパクト
  • たくさんの保護機能を内蔵

が挙げられます。

それぞれの特徴について、まとめてみました。

特徴1:使い方が簡単

下記がDRV8870を使用する際の接続イメージです。

DRV8870接続図

出典:Texas Instruments Inc. DRV8870データシート

IN1/2端子へコントローラ(マイコン等)から信号を入力することで、モーターが駆動します。

下表にあるように、例えば、IN1=”1”、IN2=”0”の場合は、出力端子であるOUT1端子からOUT2端子へと電流が流れ、モーターが回ります。逆にIN1=”0”、IN2=”1”の場合は、出力端子であるOUT2端子からOUT1端子へと電流が流れ、モーターが先程とは逆の方向に回ります。

速度制御はIN1/2端子への信号をPWM信号にすれば可能です。PWM信号のデューティを変えることで速度が変わります。

DRV8870 Hブリッジ制御

出典:Texas Instruments Inc. DRV8870データシート

特徴2:コンパクト

DRV8870は8ピンICで4.9mm*6mmと非常にコンパクトです。

DRV8870 パッケージ

出典:Texas Instruments Inc. DRV8870データシート

また、下記のようにレイアウトも簡単になるよう、ピン配置が考慮されています。

DRV8870 レイアウト

出典:Texas Instruments Inc. DRV8870データシート

特徴3:たくさんの保護機能を内蔵

この小さなICの中に5つの保護機能があります。各保護機能について確認してみましょう。

電流制限機能

突入電流やモーターのロック電流を抑制する機能です。

この機能により、突入電流やロック電流より小さな定格のモータードライバICを使用することができたり、モーター電源の電流スペックを落としたりすることができます。

DRV8870 電流制限

電流制限機能の設定は、REF端子に印加される電圧とISEN端子に接続される抵抗(RISEN)で可能です。具体的には、下記の式によって決まります。

DRV8870 電流制限値

例えば、VREF=5[V]、RISEN=0.15[Ω]ですと、約1.67[A]です。設定電流に達するとMOSFETがOFFになり、モーターへの電流供給を停止します。

DRV8870 電流制限波形

電源電圧UVLO

UVLOとはUnderVoltage LockOutの略で、電源電圧が6.1V(Typ)を下回るとすべてのMOSFET制御をディセーブルにする機能です。

一方、電源電圧が6.3V(Typ)を上回るとMOSFET制御をイネーブルにします。

DRV8870 UVLO

出典:Texas Instruments Inc. DRV8870データシート

過電流保護

出力の地絡等で過電流が流れた場合、すべてのMOSFETをディセーブルにします。DRV8870はすべてのMOSFETのドレイン-ソース間の電圧をモニタしており、急激な電流の流れを検知します。

下記は、DRV8870内のハイサイド側MOSFETのモニタリング例です。MOSFETの「ON抵抗」×「電流値」の電圧を検知して、過電流状態であるかを見分けます。

DRV8870 過電流保護

出典:Texas Instruments Inc. Application Report(SLVA505)

貫通電流保護

出力MOSFETのハイサイド側とローサイド側の同時ONを防ぐ機能です。ハイサイドMOSFETとローサイドMOSFETの制御の間に220ns程度のデッドタイムを入れて、同時ONをさせないようにしています。

DRV8870 貫通電流保護

過熱保護

ICが熱ダメージを受けないように、ジャンクション温度が150度を超えると全MOSFETをディセーブルにする機能です。

DRV8870 過熱保護

まとめ

本記事ではブラシ付きDCモーターの速度制御の方法などについて学びました。また、ブラシ付きDCモーターは比較的簡単に制御することができますが、正回転、逆回転の制御を行おうとするとHブリッジ回路が必要になることも学びました。

Hブリッジ回路はディスクリートで組むことも可能ですが、Hブリッジ回路を搭載したモータードライバを用いることでも実現することができます。さらにモータードライバにはさまざまな保護機能の搭載されていることや、製品を小型化させることができるなど、多くのメリットがあります。

これからブラシ付きDCモーターを回してみたい方は、まずTI社の評価ボードを触ってみるとよいかもしれません。DRV8870にはDRV8870EVMという評価ボードが用意されています。詳細な情報をお求めの方は弊社の問い合わせフォームからお問い合わせください。

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