Texas Instruments 技術情報

1チップでミリ波レーダーを実現!TI社製ミリ波センサー IWRシリーズの紹介

[最終更新日 : 2017/06/15]


はじめに

2017年5月17日にTexas Instruments(以下、TI)社はミリ波センサーの新しい製品群である、IWRシリーズとAWRシリーズを発表しました。(ニュースレターはこちら

本記事では、ミリ波についての簡単な説明とTI社のミリ波センサーのIWRシリーズについてご紹介します。

そもそもミリ波って何?

ミリ波(millimeter wave、mmWaveとも呼ばれます)とは、その名の通り、波長が1~10mmで、周波数が30~300GHzの電波を指しています。

電波には長波、短波、中波などの区分があり、それぞれで特性が異なるため、利用用途も異なっています。

下図が電波の区分とそれぞれの主な利用用途を表したものです。

ミリ波には電波がまっすぐ遠くまで飛ぶという特性と、ほとんどの物体にあたると反射する特性があります。これらの特性や特徴を活かし、現在は自動車衝突防止レーダーなどの用途に利用されています。

TI社のミリ波センサーの特徴

ミリ波センサー自体はTI社以外でも取り扱っていますが、TI社のミリ波センサーには他社にはない特徴があります。

ミリ波の送信/受信/データ解析を1チップで実現

従来の製品では送信、受信、解析の機能を複数の部品でまかなっていたため、基板サイズが大きくなったり、コストが高くなってしまったり、といった課題がありました。TI社のミリ波センサーはこれらの機能を1デバイスに内蔵しているため、これらの問題を解決することができます。

また、従来のミリ波センサーはSiGe(シリコン・ゲルマニウム)プロセスでしたが、TI社のミリ波センサーはCMOSプロセスを適用しており、より低価格化、低消費電力化を実現することが可能です。

広範囲、高分解能、高精度

TI社のミリ波センサーは最大300mの距離にある物体を検出することができ、距離分解能が4cm未満であれば50μmの距離精度で測定可能です。また、物体との距離だけではなく、その物体がどの角度にあるかも分かります。角度の精度は1°単位の高い精度で判別することが可能です。

今すぐ実験可能な開発ツール

TI社はIWRシリーズの評価ボード、ソフトウェア開発キット(SDK)をすでにリリースしています。これらを準備していただければTI社のミリ波センサーの性能や実力をすぐに試していただくことができます。

評価ボードとソフトウェア開発キットの詳細は下記のページからご確認ください。


IWRシリーズとAWRシリーズの違い

TI社はIWRシリーズとは別にミリ波センサーとしてAWRシリーズというものを同時に発表しました。IWRシリーズとAWRシリーズの違いは何なのか、簡単に見ていきましょう。

一番の違いは車載対応か産業機器向けか

AWRの”A”はAutomotiveの”A”です。対して、IWRの”I”はIndustrialの”I”です。

AWRシリーズは主に自動車衝突防止レーダーを想定した製品で、Q100やASIL Bといった車載規格に則った製品となっています。一方、IWRシリーズは車載非対応で、主に産業機器向けの製品となっています。

車載対応以外は基本的に同じ

車載対応/非対応という点以外の違いは基本的にはありません。

ただし、AWRシリーズにはAWR1243というデバイスがあり、これに相当するIWRシリーズはありません。このAWR1243はCPUを搭載していないため、外部にホストCPUが必要となります。主に既存のADAS(先進運転支援システム)にミリ波センサーを追加する用途が想定されています。

IWR1443とIWR1243にはARM Cortex-R4FとFFTハードウェア・アクセラレータが内蔵されています。ミリ波センサーのエントリーレベルという位置付けの製品となっています。

IWR1642とAWR1642はARM Cortex-R4FとDSPを搭載しています。DSPを搭載することによって、物体との距離測定だけではなく、検出した物体の分類やトラッキングといった、より高機能な用途に利用することが可能です。

ミリ波センサーの利用シーン

自動車衝突防止レーダー

先述の通り、ミリ波センサーが現在もっとも多く利用されているのが自動車衝突防止レーダーです。

自動車の前面からミリ波を送信すると、それが前方にある車などの物体に当たった反射波を受信します。これにより前方の物体(車、人など)との距離や相対速度、角度を測ることができます。これらの情報をもとにブレーキを制御したりすることで衝突の危険を低減することができます。

心拍数、呼吸数の測定

ミリ波は高分解能で物体との距離の測定を行うことができるため、人間の呼吸や心拍による体表の微小な動きも検知することができます。これにより、人の体に触れることなく心拍数や呼吸数の測定を行うことも十分に可能です。

以下の動画はミリ波センサーを使って呼吸数と心拍数の測定を実際に行っているTI社の動画です。

その他

他にも、工場などにあるタンクの中の液体の量を測定、ドローンの周囲にある電線や建物を検出、道路に設置して交通量を監視・・・など、さまざまな用途での利用が想定されています。

おわりに

ミリ波センサーは高価な製品だったため、自動車衝突防止レーダーのような利用用途に限られている現状がありました。しかし本製品の登場により産業機器をはじめ、より多くのアプリケーションでの採用が期待されています。

本記事で触れた内容はTI社のミリ波センサーの一部です。本製品に関するより詳細な情報をお求めの方は弊社の問い合わせフォームからお問い合わせください。

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